睡眠時無呼吸症候群
そのいびきが危ない!
- 睡眠時無呼吸症候群は単に呼吸が止まるだけの病気ではありません。
- 心臓、脳、血管に負担をかけるのです。
- 実は、睡眠時無呼吸症候群があるだけで高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などを合併する危険が高まることがわかっています。
- 無呼吸回数が多くなるにつれて、つまり重症になればなるほど、そのリスクは高くなります。
- しかし、一方で、睡眠時無呼吸症候群の治療をきちんと受けると、長生きできる可能性があることもわかっています。
- いびきは無呼吸の前兆です。
- そのため、いびきは睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くに認められます。
- しかしこの症候群はいびき以外には自覚症状が出にくい病気です。昼間の眠気を自覚される方もいますが、それは半数程度で、なかなか自分だけではわかりにくい病気なのです。
いびき
- いびきには大きく分けて「鼻いびき」と「喉いびき」の2種類があります。
- いびきをかいている時に鼻をつまんでみて、いびきが止まればそれは「鼻いびき」です。
- 鼻いびきの場合は、鼻づまりの原因を取り除くことでいびきを止められます。
- しかし喉いびきは厄介なのです…。
- 寝ている時に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」も喉いびきが原因になっているので、注意が必要です。
喉いびき
- 喉いびきとは、寝ている時に舌が気道に落ち込んでしまい、空気の通り道が狭くなることによって発生するいびきです。
- 舌が落ち込んでしまう原因は色々ありますが、口呼吸になっていることが多いです。
- 起きている時は鼻呼吸でも、寝ている時に口呼吸になってしまう人も大勢います。
- また、口を閉じているのに喉いびきをかく場合もあります。
- その場合は重症の可能性が…
- 喉いびきの原因は、どんなものがあるのでしょうか?
喉いびきの原因
- 鼻づまり
- 普段から口呼吸がくせになっている
- 肥満
- 仰向け寝
- ストレスや疲労
- アルコールや睡眠薬
- 生まれつきの骨格など
- のどちんこが大きい
- あごが小さい、舌が大きい
- 首が太い・短い
- 甲状腺機能低下によるもの
- 加齢
- 枕があっていない
いびきと気道の関係
- 人間が息を吸ったり吐いたりするときに、空気の通り道になる部分を「気道」と言いますが、何らかの理由によってこの気道がせまくなることがあります。
- 気道がせまくなると、呼吸時の空気の流れが変わります。空気抵抗が大きくなり、空気の流れが乱れてしまうのです。
- その影響で、のどの粘膜や分泌物、そして軟口蓋(なんこうがい)が振動します。この振動音がいびきの正体です。
- 気道が必要以上にせまくなれば、空気の流れが簡単に乱れてしまうため、いびきが出やすくなるのです。
気道をせばめてる5つの原因
- 太ることで気道がせまくなる
- 年齢にともなって筋肉がおとろえる
- 扁桃や口蓋垂が大きすぎる
- 鼻づまりなどのせいで口呼吸になっている
- アルコールや睡眠薬などの影響で、筋肉がゆるむ
1.太ることで気道がせまくなる
- 太りぎみの体型は、いびきと密接な関係があります。
- 太るというと、昔は見た目や体重などを気にする人がほとんどでしたが、今では体の内部につく脂肪の危険性も注目されるようになりました。
- 実は、この「体の内部につく脂肪」がいびきの原因になるのです。
- 人が太るときにどこに脂肪がつきやすいのか、それはさまざまな説がありますが、遅かれ早かれ「のどの内部」にも脂肪がたまっていきます。そして、この脂肪がいびきを引き起こします。
- のどの内部に脂肪がつくということは、その分だけ気道がせまくなることを意味しているからです。
- ① 太る
- ↓
- ② のどの内部に脂肪がつく
- ↓
- ③ 気道がせまくなる
- ↓
- ④ いびきをかくようになる
2.年齢にともなって筋肉がおとろえる
- 年齢をかさねるにしたがって、筋肉の張りは衰えていきます。のども例外ではありません。
- のどの筋肉(特に上気道筋)の張りが衰えると、舌が気道に落ち込みやすくなります。
- その結果、気道がせまくなっていびきにつながります。
3.扁桃や口蓋垂が大きすぎる
- 扁桃はのどの奥にある器官で、次の3種類があります。
1. 咽頭扁桃2. 口蓋扁桃3. 舌扁桃 - どの扁桃にも言えることですが、大きすぎると気道をふさいでしまうため、いびきの原因になります。とくに子供のいびきは扁桃が関係していることが多いと言われています。
- 扁桃と同様に、口蓋垂が長すぎることも気道をふさぐ原因になります。
4.鼻づまりなどのせいで口呼吸になっている
- 鼻の通りが悪くなると口呼吸になりますが、これはいびきを誘発します。
- なぜなら、眠っているときに口を開いていると舌がのどの奥に落ち込んで、気道がせまくなるからです。
- ほかに口呼吸をまねく要因として挙げられるのは「精神的なストレス」です。
- ストレスが多いと、脳に酸素をたくさん供給しようとして口を開けて呼吸しがちになります。
- 精神的ストレスが夜寝つけない(入眠障害)などの不眠症を引き起こすことは広く知られていますが、実はいびきにも関係しているわけです。。
5.アルコールや睡眠薬などの影響で、筋肉がゆるむ
- アルコールは筋肉の緊張をときほぐす作用があります。
- このとき、のどの筋肉がゆるみすぎると気道がせまくなって、いびきをかきやすくなります。
- なお、「眠れない夜には寝酒をする」という方もいるかもしれませんが、いびきの観点からだけでなく、眠りの質という視点からみても寝酒はやめたほうが無難です。
- アルコールと同様に、睡眠薬もからだを弛緩させることが多いのでいびきの原因になります。とくに、現在よく用いられている「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬は、筋肉の緊張をほぐす作用が強いと言われています。
- ・単なるいびき症は、健康の面で悪影響があるわけではありません。
- ・しかし、気道がせまくなりすぎると別の問題が発生します。
- ・空気の通り道が細くなるせいで、呼吸障害のような状態が続いてしまうのです。
- ・そうなると、身体に充分に酸素を送れなくなります。
- ・さらに症状がひどくなって、気道が完全にふさがるようになる
- と「睡眠時無呼吸症候群」になる可能性が高まります。
- ・ひと晩に何十回も呼吸が停止することも珍しくなく、心身に計りしれない影響をお
- よぼします。
睡眠時無呼吸症候群とは
無呼吸と低呼吸の定義
無呼吸(Apnea)の定義
・10秒以上の鼻・口の気流の停止
低呼吸(Hypopnea)の定義※1999 AASM Task Force
・10秒以上続く、50%以上の気流の低下
(50%未満の気流低下は3%以上のSpO2(血中酸素濃度)の低下または覚醒反応を伴う)
Desaturation
無呼吸の種類
「閉塞性」の睡眠時無呼吸症候群
上気道の閉塞に起因する無呼吸、呼吸努力(胸郭・腹壁の動き)が認められる
「中枢性」の睡眠時無呼吸症候群
呼吸中枢から呼吸筋への出力が消失するため、呼吸努力がなくなる
睡眠時無呼吸症候群
・無呼吸・低呼吸指数:睡眠1時間当たりの無呼吸、低呼吸の回数
( Apnea Hypopnea Index=AHI )
・AHIが5以上(5未満は正常とされています)であれば異常と判定し、これを「睡眠呼吸障害」といいます。
・睡眠呼吸障害のなかで、日中の眠気や倦怠感などの症状を伴う場合、睡眠時無呼吸症候群と診断します。
重症度の判定
AHI | = | 5回/h未満 | 正常 | |
= | 5以上~15未満回/h | 軽症 | +臨床症状 | |
= | 15以上~30未満回/h | 中等症 | ||
= | 30回/h以上 | 重症 |
なぜ総合診療科で睡眠時無呼吸症候群を扱うの?
睡眠時無呼吸症候群は1970年代あたりから世界的に認識されるようになりました。
日本でも2003年の山陽新幹線の運転士の居眠りでにわかに注目され、広く一般の方にも知られるようになったと思います。
しかし、当初は多くの方が、「いびきをかく人に多い病気で、睡眠中に何回も呼吸が止まり、熟睡できないため日中に眠気をもよおす」といった程度の理解だったのではないかと思います。
もちろんそれも正しい認識なのですが、もっと重要なのは、睡眠時無呼吸症候群は高血圧症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、不整脈、うつ病、EDなど、様々な疾患と密接な関係があり、総合的に診療することが必要なのです。
睡眠時無呼吸症候群の危険な合併症
高血圧
- 「閉塞性」であること自体、高血圧の原因になる可能性があります。
- 「閉塞性」の患者さんの50%に高血圧が認められ、高血圧の患者さんの30%に「閉塞性」が認められると報告されています。
- 薬物治療に抵抗性のある高血圧症の陰に「閉塞性」が隠れている可能性も指摘されています。
心不全
- 「閉塞性」は心臓に負担をかけて、心機能を低下させる可能性があります。
- 男女別にみると、男性38%、女性31%と男性に多いようです。
- 「閉塞性」を合併している心不全患者さんでは、「閉塞性」を治療しないと死亡率が2~3倍高くなることもわかっています。
脳卒中
- 米国での4年間にわたる研究によると、無呼吸・低呼吸指数20以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、脳卒中を発症するリスクが4倍も高まりました。
- 50歳以上の方を対象に平均3.4年間、経過をみた研究では、無呼吸・低呼吸指数が5以上の「閉塞性」の患者群は、脳卒中および死亡のリスクが「閉塞性」でない人の1.97倍になると報告されています。
不整脈
- 「閉塞性」の患者さんは、不整脈を合併する率が高く、無呼吸・低呼吸指数の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併率が高まります。
- 夜間の不整脈は「閉塞性」患者さんの50%近くに認められています。
- 睡眠中に比較的よく認められるのは、心房細動、非持続性心室頻拍、洞停止、2度房室ブロック、心室性期外収縮などの不整脈です。
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
- 冠動脈に疾患のある患者さんで「閉塞性」を合併する率は、冠動脈に疾患のない場合の約2倍です。
- 健康な人と比較した場合、「閉塞性」患者さんの虚血性心疾患の発症リスクは1.2~6.9倍と報告されています。
突然死
- 「閉塞性」の患者さんが、深夜0時~午前6時に心臓が原因の突然死をきたすリスクは、「閉塞性」でない人に比べて2.57倍高いと報告されています。
「中枢性」は、心不全をはじめとした心機能低下や脳卒中で比較的多く認められる無呼吸パターンで、多くの場合そうした心血管系の病気の結果として出現すると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群と脳卒中
・睡眠時無呼吸症候群は、独立して、あるいは種々の脳卒中危険因子に関連して脳卒中発症リスクを高めている可能性がある。
・個々の病態に応じたSASの治療は血圧を低下させる効果があるが、脳卒中予防効果についてはまだ十分なエビデンスがない(グレードC1)。
エビデンス
・睡眠時無呼吸症候群の重要な指標となる習慣性いびきが虚血性脳卒中の独立した危険因子であることが報告されています 1、2)。
・急性期脳梗塞患者181例と健常者181例での患者対照研究では、睡眠時無呼吸症候群の随伴症状である過剰な日中の眠気が脳卒中(OR 3.07、95%CI 1.65 ~6.08)に関連することも報告されています 3)。
・1,651人の男性を10年間追跡調査した観察研究によれば重篤な閉塞性睡眠時無呼吸および呼吸低下(無呼吸指数>30/時)は健常者と比較して致死的(オッズ比2.87、95%CI 1.17~7.51)および非致死的(オッズ比3.17、95%CI 1.12 ~7.52)心血管イベント(心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中)のリスクを高めることが報告されています 4)。
・閉塞性無呼吸を有する697人の前向き調査では、脳卒中あるいは死亡が起こる危険は、年齢、性、人種、喫煙、飲酒、BMIおよび糖尿病、脂質異常症、心房細動、高血圧の有無を調整した場合は、パサート比1.97(95%CI 1.12~3.48) であると報告されています 5)。
・70歳以上の高齢者810人の前向き調査によれば無呼吸指数が30以上の重症の閉塞性無呼吸では、脳梗塞発症はHR 2.52(95%CI 1.04~6.01)であると報告されています 6)。
・CPAP治療された閉塞性睡眠時無呼吸患者群と健常対照群の間に致死的(オッズ比1.05、
95%CI 0.39~2.21)および非致死的(オッズ比1.42、95%CI 0.52~3.40)心血管イベントに差はありませんでした。
・睡眠中の無呼吸イベントが起こる毎に1 %ずつ高血圧の発症を増加させ、夜間の酸素飽和度の10%の減少により血圧が13%上昇するという 7)。
・薬剤抵抗性の高血圧の原因としてSASを疑う必要があります 8)。
・睡眠呼吸障害の治療は、個々の病態に応じてCPAP、二相性気道陽圧呼吸(BiPAP)を選択します。治療が成功すると血圧を低下させることができます 9-11)。
引用文献
1)Partinen M, Palomaki H. Snoring and cerebral infarction. Lancet 1985;2:1325-326
2)Palomaki H, Partinen M, Erkinjuntti T, Kaste M. Snoring, sleep apnea syndrome, andstroke. Neurology 1992;42(7 Suppl 6):75-82
3)Davies DP, Rodgers H, Walshaw D, James OF, Gibson GJ. Snoring, daytime sleepiness and stroke:a
case-control study of first-ever stroke. J Sleep Res 2003;12:313-318
4)Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AG. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous
positive airway pressure:an observational study. Lancet 2005;365:1046-1053
5)Yaggi HK, Concato J, Kernan WN, Lichtman JH, Brass LM, Mohsenin V. Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. N Engl J Med 2005;353:2034-2041
6)Munoz R, Duran-Cantolla J, Martinez-Vila E, Gallego J, Rubio R, Aizpuru F, et al. Severe sleep apnea and risk of ischemic stroke in the elderly. Stroke 2006;37:2317-2321
7)Lavie P, Herer P, Hoffstein V. Obstructive sleep apnoea syndrome as a risk factor for hypertension:population study. BMJ 2000;320:479-482
8)Logan AG, Perlikowski SM, Mente A, Tisler A, Tkacova R, Niroumand M, et al. High
prevalence of unrecognized sleep apnoea in drug-resistant hypertension. J Hypertens
2001;19:2271-2277
9)Pepperell JC, Ramdassingh-Dow S, Crosthwaite N, Mullins R, Jenkinson C, Stradling JR, et al.
Ambulatory blood pressure after therapeutic and subtherapeutic nasal continuous positive airway
pressure for obstructive sleep apnoea:a randomised parallel trial. Lancet 2002;359:204-210
10)Becker HF, Jerrentrup A, Ploch T, Grote L, Penzel T, Sullivan CE, et al. Effect of nasal continuous
positive airway pressure treatment on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea.
Circulation 2003;107:68-73
11)Gotsopoulos H, Kelly JJ, Cistulli PA. Oral appliance therapy reduces blood pressure in obstructive
sleep apnea:a randomized, controlled trial. Sleep 2004;27:934-941
周期性四肢運動障害とは
・寝ているときに足がピクピクと動いたり、ひじがすばやく動いたりする…とういった動作が睡眠中に繰り返されるのが「周期性四肢運動障害」です。
・これは睡眠障害のひとつで、年齢とともに発症する確率が高くなります。
・30~50歳では5%、50~65歳では30%、65歳以上では45%に周期性四肢運動障害が見られる。
【症状】
・周期性四肢運動障害にかかっていると、寝ている間に次のような動作を繰り返すようになります。
・つま先や足首がピクピクと動く
・ひざ蹴りをするような動作をする
・ひじをすばやく曲げ伸ばす
・これらの動作が睡眠中にどのくらい繰り返されるかというと、それは症状の度合によります。
・ただ、周期性四肢運動障害の診断基準のひとつに「0.5~5秒持続する手足のピクつきが1時間に15回以上確認される」という項目がありますので、1時間に十数回以上のピクつきがあるようなら、この睡眠障害の可能性が高いです。
周期性四肢運動障害の動作は、睡眠前半から中盤には発生しやすいものの、明け方になると症状は軽減します。
・周期性四肢運動障害にともなう手足の動作は、本人の意志とは関係なく起こります。そして寝ている最中なので、自覚症状もありません。
・ほとんどの場合、となりで寝ている家族に指摘されたことがきっかけで、自分の症状を認識することになります。
・しかし、ここで問題になるのは自覚症状がなくても睡眠の質は損なわれているという事実です。
・具体的には、「しっかり寝たはずなのに昼間に眠くなる」「夜中に目が覚めてしまう」といった不眠の症状が現れやすくなります。
・手足の動きにともなって脳が覚醒してしまうため、深い睡眠へスムーズに移行できなくなってしまうのです。
・深い睡眠がとれなくなるぶん、疲労回復もうまくできなくなります。
・そのため「たくさん寝たはずなのに昼間に眠くなる」という症状が出るようになります。
・寝ている間に手足のピクつきが起きると、それが引き金になって夜中に目が覚めることもありえます。
・睡眠薬では周期性四肢運動障害は治りません。睡眠薬はあくまでも薬の力で脳を鎮静化して、眠りをもたらすだけだからです。
・終夜睡眠ポリグラフ検査にて確定診断します。
・この検査で足の動きを客観的に測定することによって、本当に周期性四肢運動障害なのか、あるいは他の睡眠障害なのかが区別できます。
【原因】
・周期性四肢運動障害の根本的な原因は今のところ解明されていません。
・ドーパミンの機能障害によるものではないかと考えられています。
【検査】
・終夜睡眠ポリグラフ検査にて確定診断します。
・この検査で足の動きを客観的に測定することによって、本当に周期性四肢運動障害なのか、あるいは他の睡眠障害なのかが区別できます。
【治療】
・ドーパミン受容体作動薬のプラミペキソールは有効です。
・プラミペキソールで効果がみられないときは、クロナゼパム〈商品名:リボトリールなど〉を使います。
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)とは
(Restless Legs Syndrome:RLS)
レストレスレッグス症候群の用語は1960年、
スウェーデンの神経学者 Karl-Axel Ekbomにより初めて用いられました。
RLSとは
特に下肢を中心とした異常感覚のために、「どうしても脚を動かしたい」という耐え難い運動欲求が生じる感覚障害です。
症状
異常感覚は皮膚表層ではなく深部に起こる場合が多く、患者によってさまざまな言葉でその不快感は表現されます。
疫学
日本人の2~5%に潜在患者が存在するとされています。また、男女比をみると女性に多く、40歳以上に多くみられる疾患です。
治療
症状が軽度あるいは出現頻度が低い場合には非薬物療法(生活指導)を行い、中等度以上の場合は薬物療法が併用されます。
【原因】
1. ドパミン作動神経の機能障害
薬剤による症状変化
・L-ドーパ、ドパミンアゴニスト⬇︎⬇︎・ドパミンアンタゴニスト⬆︎⬆︎
脳画像研究
・特発性RLS:線条体D2受容体結合能⬆︎⬆ Cervenka, 2006
:被殻D2受容体結合能⬇︎⬇ Turjanski, 1999
:尾状核や︎ 被殻でD2受容体結合能 ⬇︎⬇︎ Earley, 2013
2.鉄代謝異常
・脳脊髄液:鉄、フェリチンの減少(末梢血では正常)
→血清からの中枢神経への鉄輸送の障害 Earley, 2000 Mizuno, 2005
・MRIでの鉄の計測:黒質と被殻での鉄含有量減少 Allen, 2001
・病理解剖:鉄とH-フェリチンの黒質での減少 Connor, 2003
・鉄は活性チロシン水素化酵素とD2受容体機能に関与
3.遺伝的要因
・RLS患者の1親等では、RLSの危険性は、一般人口の3〜5倍。Allen RP, 2003
・特発性RLS(45歳以前の発症)では約30%に家族集積性あり、常染色体優性遺伝)
Allen RP, 2007
・全ゲノム関連解析: BTBD9 Stefansson, 2007、Winkelmann, 2007
・家族性RLSの連鎖解析研究と共通:PTPRD Pichler, 2008
【診断】
【治療】
非薬物療法
《予防的対応》
・睡眠衛生指導(不規則、寝不足に注意)
・誘因となる嗜好品や薬剤の中止、変更 ➡︎ アルコール、カフェイン、
ニコチン、ドパミン遮断薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬
・マッサージ、ストレッチ、軽い運動
・暖める、冷やす(シャワー、湿布)
・注意をそらす工夫
《鉄欠乏への対応》
・鉄剤による補充療法 ➡︎ 血清フェリチン濃度≧75μg/dl
薬物療法
1) ドパミン作動薬(非麦角系)
・ロチゴチン 2.25〜6.75mg
・プラミペキソール 0.125〜0.75mg
腎排泄性にて腎不全患者への投与に注意が必要。
・ロピニロール、タリペキソール(保険適応外)
麦角系、L-ドーパ:副作用、Augmentation(症状増強)の問題
2) ガバペンチン・エナカルビル 300〜600mg
3) クロナゼパム(保険適応外) 0.5〜1mg
睡眠時無呼吸症候群の治療
・生活習慣改善、マウスピース、CPAP、手術等の治療で睡眠中の上気道の狭窄を改善してから、精密PSGで調べると呼吸も安定し、睡眠の分断が改善されることが分かります。
・これらの治療は眠気、頭痛等の症状を改善し、生活習慣病の予防にもなります。
治療方法
1.CPAP療
・睡眠時に鼻マスクより空気を送り、閉鎖した気道を広げて呼吸を維持する治療法で有効性安全性が高く、現在最も普及しています。
・機械の使い方、マスクの使い心地を確認しながら行います。
・マスクの種類は何十種類もあります。機械の風圧の設定も様々です。
・使いやすくなるまで睡眠検査技師が設定や調整を行います。
・診察と機器代で、毎月5,000円弱(3割負担)の費用がかかります。
・CPAP療法を開始したら、約3〜6ヶ月後に再び精密PSG検査で確認します。
・定期的な精密PSG検査は、1〜3年に1回を目安に行っています。
2. マウスピース療法
・睡眠時に顎と舌を前進させるように工夫されたマウスピースを装着することで気道を確保し、いびきや無呼吸を軽減します。
・歯科で製作します。専門の歯科医へ紹介いたします。
3. 外科的治療
・扁桃腺や軟口蓋の肥大が無呼吸の主因となる場合に、肥大部位を切除して気道を確保する手術です。
CPAP療法
マウスピース療法
外科的治療
CPAP療法
・外見は馴染まない印象を与えるでしょうが、改良洗練されていて特に鼻マスクの感触はソフトタッチです。
・睡眠時無呼吸症候群の患者さまが気持ちよく眠れるのを経験すると、手放せなく感じたり、もっと圧を上げたくなったり、更に馴染んできます。
機械の中のモーターが、ちょうどドライヤーのように、空気のフロー(流れ)をつくることで気道の内圧を上げ上気道の閉塞を防ぎます。
・この方法は、挿管せずに、マスクで行う非侵襲的人工呼吸器にまで発展して、酸素濃度や気道内圧を調節することで呼吸不全の治療でも、革命的な威力を発揮しています。
睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸症候群は、舌が気道をふさぐなどの原因により気道が閉塞し、無呼吸になります。
CPAP療法
CPAPは鼻マスクを介して、一定陽圧の空気を送り込み、上気道を広げます。広げるための圧力は患者さま個々に異なります。