家族性高コレステロール血症 (FH)
- ・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の異常な増加を来す遺伝病である。
- ・原因は、LDLを肝臓で取り込む受容体に関係する遺伝子に異常があるため、LDL-Cが血液中で高くなり、 若いときから動脈硬化が進んで、血管が狭くなったり詰まったりする。
- ・心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患を発症しやすい。
- ・発症年齢も40~50代と、通常より20年程度早まる傾向があるので、早期発見、早期治療が非常に重要。
- ・軽症のケース(ヘテロ接合体):LDLを肝臓で取り込むための受容体の遺伝子一つに異常。
- 200人~500人に1人の頻度。
- ・重症のケース(ホモ接合体):その遺伝子二つに異常。
- 16~100万人に1人の頻度。日本では公費対象の特定疾患に指定されている。
- ・主な原因遺伝子は、19番染色体の19p13.2に存在する「LDLR遺伝子」。
- ・LDLR遺伝子変異が原因で、LDL受容体の数が減ったり、あるいはLDL受容体が正しくLDLを取り
- 込めなくなったりすると、血中のLDLコレステロール値が高くなる。
- ・LDLR遺伝子ほど人数は多くないが、APOB遺伝子、PCSK9遺伝子、LDLRAP1遺伝子も、この疾患
- の原因遺伝子として同定されている。
- ・LDLR遺伝子、APOB遺伝子、PCSK9遺伝子の変異が原因の場合は、常染色体優性(顕性)遺伝形式で、
- 親から子へ遺伝する。
- ・LDLRAP1遺伝子の変異が原因の場合は、常染色体劣性(潜性) 遺伝形式で、親から子へ遺伝する。
成人(15歳以上)FHヘテロ接合体診断基準
- 他の原発性・続発性脂質異常症を除外した上で診断する。
- すでに薬物治療中の場合、治療のきっかけとなった脂質値を参考にする。
- アキレス腱肥厚はX線撮影により男性 8mm以上、女性7.5mm以上、あるいは、超音波により男性6mm以上、女性5.5mm以上にて診断する。
- 皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まない。
- 早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満で発症した冠動脈疾患と定義する。2項目以上を満たす場合にFHと診断する。
- 2項目以上を満たさない場合でも、LDL-Cが250mg/dL以上の場合、あるいは2または3を満たしLDL-Cが160mg/dL以上の場合はFHを強く疑う。
- FH病原性遺伝子変異がある場合はFHと診断する。
- FHホモ接合体が疑われる場合は遺伝学的検査による診断が望ましい。診断が難しいFH ヘテロ接合体疑いも遺伝学的検査が有用である。
- この診断基準はFHホモ接合体にも当てはまる。
- FHと診断した場合、家族についても調べることが望ましい。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
常染色体顕性(優性)遺伝形式
常染色体顕性(優性)遺伝形式:一組の遺伝子の一方に変異があれば発症する場合(両親のうち、どちらかに病気の原因となる遺伝子変異がある場合)、子どもが同じ病気になる確率は一回の妊娠につき50%。
常染色体潜性(劣性)遺伝形式
常染色体潜性(劣性)遺伝形式:一組の遺伝子の双方に変異がある時のみ発症する場合(両親のどちらも原因となる遺伝子をひとつ持つ場合(変異保有者))、子どもが同じ病気になる確率は一回の妊娠につき25%(2本の遺伝子に原因遺伝子がある)、変異保有者(1本の原因遺伝子を持っている)となる確率は50%。
対象疾患と関連遺伝子
当院における高コレステロール血症の治療方針
成人FHの治療(15歳以上)
FH患者は若年からの累積LDL-C値がきわめて高く、CHD
発症予防のために早期からの介入が必須です
当院における脂質異常症の定期診療
- ・対面診療:月1回(オンライン診療:3ヶ月に1回)
- ・血液・尿検査(外注) :2〜3ヶ月に1回
- ・心エコー検査・心電図検査:年1回
- ・頸動脈エコー検査:年1回
- ・腹部エコー検査:年1回
アキレス腱肥厚の診察
アキレス腱 X-P写真
角膜輪
眼瞼黄色腫
皮膚黄色腫
手背腱黄色腫
腱黄色腫
エコー検査(初診時および1年に1回)
【心エコー検査】
・心機能、壁運動の評価
・弁膜症の評価
・血栓の有無の評価
【頚動脈エコー検査】
・右鎖骨下動脈の動脈硬化の評価
・総頚動脈、内頚動脈の動脈硬化の評価
・椎骨動脈の血流の評価
【腹部エコー検査】
・腹部大動脈の動脈硬化の評価
・肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱の評価、特に、脂肪肝の評価
・前立腺、子宮、卵巣の評価
頸動脈エコー検査
・動脈硬化がどの程度進行しているかを定期的に調べる必要がある。
・血管壁の厚さを測ることにより動脈硬化の重症度を判定する。
・これで動脈硬化の進行をチェックすれば、現在の治療が十分であるか
どうか、さらに積極的な治療が必要かどうかもわかる。